テストステロン投与による副作用(FTM向け)
目次
1 はげ(脱毛症)
2 ニキビ
3 体臭変化
4 一時的な記憶力低下の可能性
5 血圧上昇の可能性
6 浮腫
7 体重増加
8 膣の乾燥
9 片頭痛
10 子宮体がん(子宮内膜がん)リスク上昇の可能性
11 妊娠能力の低下もしくは喪失
12 糖尿病リスク
13 女性ホルモン低下
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はげ(脱毛症)
症状がでるかどうかや脱毛パターンは遺伝によります。
テストステロン投与の最初の1年間は症状の進展はほとんどありません。
その後投与期間が長いほど進展します。
FTMの50%ほどに症状が現れます。
対策
テストステロンの投与量が過剰だと著しく進行します。
この場合は投与量を減らすことである程度の回復が望めます。
しっかり洗髪して皮脂をちゃんと洗い流したり、頭皮のマッサージを行うなどの予防法があります。
育毛剤で改善する方法もあります。
詳しくは→はげの改善法
ニキビ
男性ホルモンは皮脂腺の成長において中心的役割をしています。
皮脂の分泌が増えることで思春期男性のようにニキビができます。
主に顔、背中にできやすいです。
ホルモンバランスの変化や乱れも要因の一つとなりえます。
対策
ニキビの程度や落ち着くまでにかかる時間は思春期男性と同様、人それぞれです。
基本的には1〜2年もたてば落ち着いてきます。
あまりにもひどい場合は治療薬などで対処します。
詳しくは→ニキビの改善法
体臭変化
皮脂の量が増える影響で体臭が増します。
においの質も男性的なものに変わります。
一時的な記憶力低下の可能性
女性ホルモンには認知能力や記憶力の低下を防止する作用があります。
そのため女性ホルモンが少ない男性は加齢による脳の委縮スピードが女性の3倍早いと言われています。
テストステロン投与開始初期は女性ホルモンが急激に低下することで記憶力が一時的に低下する可能性があります。
血圧上昇の可能性
若干ですがテストステロンには塩分など尿の排泄を抑制する働きがあります。
その結果塩分や水分の体内量が増加します。
カリウム、カルシウム、硫酸基、リン基などの体内貯留も増加します。
これにより血圧が上がる可能性があります。
投与開始前からすでに高血圧の症状があったり心臓病がある場合は医師に相談してください。
浮腫
テストステロンは水および電解質の保持(ナトリウム、カリウム、カルシウム、無機リン酸塩)を促すので浮腫ができやすくなります。
浮腫とは足首および脚における異常な体液の蓄積のことです。
通常痛みはありません。
毎日の水分摂取量を増やすことで問題が軽減または改善することがあります。
体重増加
体の水分量増加により急速に体重が増えることがあります。
筋肉量の増加も要因になります。
筋肉は脂肪の約2倍重いです。
膣の乾燥
男性ホルモン作用によって膣が萎縮して自己浄化作用が低下します。
細菌などの感染症にかかりやすくなります。
対策
抗生物質の使用で簡単に治りますが、恥ずかしさのあまり病院に行かないでいると悪化させる可能性があります。
粘り気があり白や黄色っぽいおりものが何日も続くようでしたらカンジダ症の可能性があります。
魚のような匂いを伴う異常な灰白色の膣分泌物であったり、膣周囲に痒みや灼熱感がある場合は細菌性膣炎の可能性があります。
片頭痛
ホルモンバランスの変化が原因で症状がでる可能性があります。
血圧上昇により、もともと片頭痛持ちの方は悪化する可能性があります。
子宮体がん(子宮内膜がん)リスク上昇の可能性
子宮体がんとは子宮内膜にできるがんのことです。
本来、生理不順や閉経後の女性に多く見られる病気です。
原因は女性ホルモンや代謝系(肥満、高血圧、血糖、脂質異常など)の分泌バランスの崩れといわれています。
テストステロン投与中のFTMもこれらに当てはまるため、発症リスクが上昇する可能性があります。
対策
代表的な症状として「月経とは無関係の長く続く少量の出血」があります。
ただしこの症状は「子宮内膜過形成」によっても起こります。
これは子宮内膜組織が過度に蓄積されている状態のことをいい、テストステロン開始の最初の数年間に最も起こりやすく、決して珍しいことではありません。
子宮内膜過形成の場合、生理と同じように子宮内膜が排出されているだけなので問題はありません。
どちらも微量出血という同じ症状で判別が難しいので、出血があった場合には原因を特定するために必ず病院で診察を受けてください。
一般的に子宮内膜生検(および場合によっては超音波検査)で検査します。
一部の医師は症状の有無にかかわらず2年ごとに子宮内膜超音波検査を推奨しています。
妊娠能力の低下もしくは喪失
テストステロン投与中は月経が停止するため妊娠能力はほぼなくなります。(ゼロではない)
投与を中止すれば月経は再開され妊娠能力は回復します。
しかし投与期間が長い場合、卵巣の状態次第では妊娠するための補助的な生殖技術が必要になったり、妊娠能力が回復しない可能性があります。
子供が欲しい場合はするべきではありません。
糖尿病リスク
テストステロン療法は体重増加を引き起こし、 インスリン感受性を低下させます(インスリン抵抗性の増加)。
これは2型糖尿病を発症するリスクを上げます。
また一般男性において異常に高いもしくは低いレベルのテストステロンは2型糖尿病のリスクを上げることがわかっています。
したがってFTMにおいても男性の基準値におさまる正常なテストステロンレベルが求められます。
女性ホルモン低下
男性ホルモンには女性ホルモンの分泌を抑制する作用があります。
ホルモンバランスが男性的になることで男性に多い病気の発症リスクが上がります。
逆に乳がんのような女性に多い病気の発症リスクは男性並みに下がります。
(詳しくは次ページの健康リスクにて)
相互作用について
他の医薬品や市販薬などを服用している場合はホルモン剤と相互作用を起こす可能性があります。
インスリン
抗凝血剤(ワルファリンを含むもの)
メチルプレドニゾロン、プレドニゾンなどを含むステロイドなど
が知られています。
なにかしらの薬を服用している場合は自己判断せず医師の診察を受けてください。
関連ページ
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